Research Abstract |
非一様な過冷却域をもつ複合成分融液の凝固を対象として,特に,熱力学的に不安定な過冷却場で形成されるデンドライト結晶の成長機構を明らかにすべく,スクシノニトリル-アセトン有機混合物を供試したシミュレーション実験ならびにその速度論の展開を行った結果,以下の知見を得た. 1.凝固の微視的な構造のビデオ観察と温度場の詳細な測定とにより,壁面での核生成に続く初期の凝固過程はほぼ瞬時に形成される1次アーム,次いで結晶間の組成的過冷を要因とする2次さらには高次のアームからなるデンドライト結晶の自由成長により,過冷却場が解消されるものであることが明らかとなった. 2.自由デンドライト結晶が壁面近傍の過冷却全域に成長した時点で,凝固は一旦そこで停止することになるが,その後は初期の断熱的な凝固により中断された準定常的な熱伝導が再開するための待ち過程となることが明らかとなった. 3.凝固の初期過程に対する速度論を展開すべく,非一様な過冷却場を結晶が配列成長する場合を対象として,結晶先端の凝固は前方の過冷場を駆動力とするとともに,隣り合う結晶間では間隙部に残存する過冷却を駆動力とし,その解消により決定されるとした凝固モデルを提示した. 4.提示された凝固モデルのもとで熱・物質移動を考慮した理論解析を行い,実験との比較を行った結果,モデルの妥当性が概ね示されたが,高次アームの省略や結晶数密度の空間的な変化など,より複雑な現象を考慮にいれたモデル化が必要であることが明らかとなった.
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