Research Abstract |
ウェーブレット変換は、ひとつの基本関数(基本ウェーブレット関数)にスケール変換とシフト変換を作用して得られる関数(ウェーブレット)の組を基底関数として用いる一種の信号展開である.このために,非定常的信号の解析に対して,通常のフーリエ変換では見えにくい情報がウェーブレツト変換を使うことにより見え易くなることが期待される.このような性質をもつウェーブレツトによって高精度の信号解析を行うためには,信号の展開に用いるウェーブレツトの特性をどのように選ぶかが重要な問題となる.そこで,本研究においては,計算の複雑度と非定常性の大きい画像信号の解析や構成に適したウェーブレツトの特性を明らかにすることを目的として研究を行い,以下の研究成果を得た. 1.双直交ウェーブレツトによる信号展開について,多重解像度解析理論を応用して理論的考察を行い,いくつかの基本的性質を明らかにした.さらに,これらの性質を利用して双直交ウェーブレツトの設計法を与えた. 2.上記の設計法では,基本ウェーブレツト関数の形は1つには決まらない.そこで,何とかしてウェーブレットが唯一の形になるように設計するということも考えられるが,逆に,この設計の自由度を生かしてウェーブレットの最適化を行おうという設計方法が考えられる.このとき,ウェーブレットの最適化基準は信号処理の目的に応じて適当に選ばれることになるが,ここでは,信号圧縮(データ圧縮)の観点から,ウェーブレット級数の係数エネルギーが最小になるように基本ウェーブレツト関数の最適化を試みた. 以上をまとめると,本研究の成果はウェーブレットの最適設計に関する今後の研究の理論的基礎となる部分であり,これらの研究成果を踏まえて継続研究を行う必要がある.
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