Research Abstract |
従来,システムの同定のために,線形モデルが多く用いられてきた。しかし,実在するシステムの多くは非線形性を有し,従来の線形モデルのみによる解析では,予測や,制御を行う上で精度に問題が生じる場合がある。本研究では,ニューラルネットワークにより非線形時系列モデルを構築し,これによる時系列解析法の検討を進めてきた。階層型ニューラルネットワークの標準的が学習法であるバックプロパゲーションアルゴリズムは,学習に時間を要するという問題があった。本研究では,まず,学習過程における重みパラメータの振動現象を抑え込むアルゴリズム(Kick out法)を開発し,これにより時系列モデルの効率的な学習を実現した。また,モデルの構造決定のための理論的な考察を進め,線形モデルの決定に用いられている情報量基準AICをニューラルネットワークの構造決定に用いることは問題があることを指摘した。こうした点を踏まえた上で,非線形時系列をニューラルネットワーク予測モデルで同定し,さらに,その非線形性を量として把握するために,非線形性尺度なる量を定義し,実際の時系列からこれを測定する方法を与えた。 さらに,時系列における相空間上の非線形関数の形状を直接視認するために,パーソナルコンピュータ3台を用いた動的3次元立体表示環境を構築した。これにより,多次元の空間における非線形性を直接把握することができ,モデル構築のための指針を得ることができる。
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