Research Abstract |
申請者らは人間に見られような優れた触知覚を可能とする触覚センサを実現することを目指しており,そのためにはセンサ自身が3次元的な広がりを有していることを積極的に利用することが重要であることをこれまで様々な角度から示してきた. 本研究では新たにテンソルセルを用いる触覚アーキテクチャを提案しその理論的基礎の構築と実験的な検討を行なった.ここで考えるセンサの構造は,センサを構成する柔軟体内部に6自由度の応力テンソルを観測する微小ユニット(テンソルセル)をセンサ内部に3次元的に配置したものである.センサ内部の応力テンソル場は,その表面で与えられる2次元的な応力ベクトル分布に対し,その成分の数と深さ方向の広がりという2つの意味で冗長な場を形成している.そしてこの場を適切な視点から眺めてやることにより,表面応力分布の重要な特徴が,物理的に実現容易な構造のセンサと簡単な信号処理により抽出可能であることが見い出されてくる.本年度は,まず各テンソルセルから得られる応力の固有構造が,その観測点の深さに比例したスケールでの表面応力分布の広がり次元に対応することを理論的に明らかにし,テンソル6成分を観測することの優位性を明確にした.次に応力6成分に対し等方的な感度を有するテンソルセルを設計し,それを用いて全体のセンサを構成することのメリットを,単一セルあたりが取得する情報の質の高さとデバイス作成技術の容易さの面から吟味したのち,実際に試作したセルに関して動作確認と基礎的な触覚情報抽出実験を行なった.本センサにおいてはテンソルセルを3次元配置することによってセンサ自身の深さ方向の広がりをスケールペースとして有効利用できる構成でありながら,各セルの出力からセル真上付近の応力分布の広がり次元(点状あるいは線状の集中分布の存在の検出とその広がりの定量的見積り,さらには集中分布の際にはその位置の同定)を容易な演算により知覚同定可能であることを実験的に確認した.
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