Research Abstract |
本研究では,地理情報システムにおいて用いられるラスターデータのサイズを決定するための規則について,基礎的な考察を行った.まずはじめに,積分幾何学における手法を用い,あるサイズのラスター上にランダムに置かれた対象物が認識される確率を解析的に算出した.ここでは例として,25,000分の1土地利用図を想定し,各ラスターには,ラスター中で最大面積を占めている土地利用が割り当てられるという,いわゆる多数決原理に基づくものを取り上げた.これは,都市計画の分野においてラスターデータを作成する場合,最も一般的な決定規則である.この規則に従う場合,対象物はラスター中の半分以上の面積を占めていれば,確実に認識されることになる.対象物が円の場合,ラスターに含まれる円の大きさの期待値がラスターサイズの半分以上になるには,ラスターサイズが円の直径の4分の3以下である必要があり,これがラスターサイズの大きさの一つの基準を与える.図形がさらに複雑な場合には,ラスターサイズはさらに小さくする必要がある. 次に,円を実際にラスター上に落とした場合の,重複部分の面積の確率分布をワークステーションを用いたシミュレーションによって求めた.その結果,分布形は正規分布にかなり近いことがわかり,対象物の認識される確率と,ラスターサイズとの間にはかなり規則的な関係があるものと思われた.従って,対象物の認識される確率が与えられれば,そこから必要なラスターサイズを計算することが可能となった. 今回,このシミュレーションに多くの時間を割かれてしまったため,実際の土地利用データへの適用を行うことはできなかったが,この点については今後さらに研究を継続する予定である.
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