Research Abstract |
交通量配分モデルを利用者の交通行動をより詳細に再現するように拡張した。具体的には,旅行時間の確率変動を明示的に考慮し,ドライバーが旅行時間の変動に対処するために行なう交通行動を内包した配分モデルである。旅行時間が変動する場合,ドライバーは単に期待旅行時間の長短だけではなく,確実性も考慮にいれて走行経路を選択する。このことを,目的地への遅刻というリスクへの対応行動としてとらえ,リスク分析の立場から実効旅行時間という概念を導入してモデル化した。また,ドライバーは主観的な知識に基づいて行動決定することから,旅行時間変動に関する主観情報を明示的に考慮することによって,現実的な交通量配分モデルとしてリスク配分モデルを構築した。 リスク配分モデルの交通量配分モデルとしての特徴は,平均的な交通流による配分ではなく,旅行時間の変動を,確率変数として明示的に取り扱う点にある。そして利用者行動を,目的地への遅刻に対するリスクと時間費用のトレードオフから経路が選択されると仮定し(リスク利用者均衡配分),一方,交通管理者は経路交通量の関数である期待総費用を最小にするように,システム最適な経路交通量操作を行うと考える(リスクシステム最適配分)。これら行動規範の異なる2主体の相互作用として交通配分を2通りに定式化した。さらにドライバーの情報獲得過程を考慮するために,旅行時間変動を表す旅行時間分布に関して,客観分布と主観分布を区別した。これらのことより,リスク配分では,管理者の行動規範と位置づけられるリスクシステム最適配分と,ドライバーの主体的な行動の結果を記述するリスク利用者均衡配分の配分結果を比較することによって,ドライバーの有する主観情報の質について検討できる枠組みとなっている。本研究では,実効旅行時間モデルを実データでキャリブレーションして現象説明力の検証も行なった。
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