Research Abstract |
供試菌株は耐熱性エンテロトキシンを産生する毒素原性大腸菌(血清型0168)を用いた。供試菌液にクロラミン溶液を注入し,経時的に菌液を採取した。採取した菌液はTSA培地及び0.1%デソキシコール酸ナトリウム添加TSA培地(以下,TSA-D培地と表記)に塗抹し,36℃で48時間培養後,集落数を計数した。 Ct値と生残率の関係はほぼChickの法則に従っていた。TSA培地を用いた場合の不活化速度よりもTSA-D培地を用いた場合の不活化速度のほうがわずかに大きかった。選択培地を用いて消毒プロセスを評価すると,不活化速度を大きく見積る可能性がある。 クロラミン濃度が0.06mgCl_2/lの場合,損傷率は当初は減少した。これはクロラミンと接触前からの損傷菌(初期損傷菌)の不活化速度が非常に大きいためと考えられる。すなわち,クロラミンとの接触による損傷菌の生成が,初期損傷菌の減少に追いつかないため,このような現象が生じたものであろう。損傷率は,その後,緩やかに増加した。クロラミン濃度が0.12及び0.19mgCl_2/lの場合は,損傷率は接触開始時は明白な増加を示さず,その後,わずかに増加する傾向を見せた。クロラミン濃度が0.38及び0.54mgCl_2/lの場合は,接触開始時から損傷率は増加し,その後,ほぼ一定の値となった。初期損傷率は0〜17%の範囲であった。 実験終了後,TSA培地上のコロニーについてPCRによりST遺伝子保有の有無を確認したところ,何れも陽性であった。従って,損傷菌も毒素の産生能を保有しており,決して見過ごせないことが示された。
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