Research Abstract |
接合部の高性能・高品質化は溶接工学における最高位の研究目的である.アークプラズマを用いたアーク溶接法では,溶接後の継手性能や品質がアーク放電特性に大きく依存していることは経験的に広く知られている.当研究室では,対象母材の違いによって溶接プロセス中のアーク放電特性が異なる主因はアーク・母材(陽極)境界層におけるエネルギー空間分布の変化であると考え,境界層でのアークプラズマの熱力学的状態を解明することを目指している. 本研究では,その第一段階として,アーク溶接法の一つであるアルゴンGTA溶接法を取り挙げ,母材(陽極)近傍のアルゴンプラズマの温度を計測した.陰極は3.2mmphiのW-2%Y_2O_3,陽極は水冷銅板(非溶融)であり,アークは陰極と陽極の間において発生させた.プラズマの温度は,分光計測法を用いて2本のスペクトル線の強度比より求められた.その分光計測は,レンズを通してスクリーン上に投影されたアークの光を石英ファイバーを通してモノクロメータにかけ,CCDカメラによって電流信号に変換した後,高速演算コンピュータでデータ解析を行なうことによってなされた. その結果,アークプラズマ(アーク電流200A)の温度は,最高で約18000度であり,陽極から1mmの陽極近傍においても約6000度に達していることがわかった.したがって,アーク・陽極境界層には非常に急峻な温度勾配が存在し,境界層での物質輸送には急激な温度変化が伴うことが示唆される.また,アークプラズマの発生に要する時間は約1/200秒であり,プラズマが定常状態に達した後は,今回の実験範囲に限り,温度分布の時間的変化はなかった.しかし,実験の溶接プロセスのように母材(陽極)が溶融し,プラズマ中に金属蒸気が伴う場合は,温度分布が時間的に変化するものと考えている.
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