Research Abstract |
本研究では,CdTe化合物の生成熱をカルベ型の双子型溶解熱量計を用いて,また,Cd-Te2元系の熱含量を落下型熱量計を用いて測定し,得られた生成熱と含熱量値に熱力学解析法を適用し,Cd-Te2元系融体の熱力学量の導出を試みた。その結果は次のように要約される。 1)双子型溶解熱量計を用いた溶解熱測定により,773KにおけるCdTe化合物の生成熱は,-138.3±0.9kJ/molと決された。また,773Kにおける生成熱より,298.15Kにおける標準生成熱は,-111.4±0.9kJ/molと決定された。 2)Cd-Te2元系の熱含量を0.5≦N_<Tb>≦0.95の範囲に渡り,800〜1450Kの温度範囲で測定し,熱含量-温度-組成相関図を作成した。得られた相関図に基づき,Cd-Te2元系の状態図およびCdTe化合物の融点,融解熱が決定された。CdTe化合物の融点および融解熱は,それぞれ,1373±2K,43.5±0.3kJ/molを示した。 3)CdTe化合物の熱含量測定結果にShomate関数を適用し,CdTe化合物の比熱の温度式を算出した。その結果は次式で書き表すことができる。 Cp/J・mol^<-1>・K^<-1>=47.3+10.81・10^<-3>・T-0.49・10^5T^<-2>(800≦T/K≦1373) Cp/J・mol^<-1>・K^<-1>=179.3(1373≦T/K≦1450) 4)得られたCdTe化合物の標準生成熱ならびにCd-Te2元系の熱含量値に熱力学解析法を適用し,1400KにおけるCd-Te2元系融体の混合自由エネルギー,成分活量,混合熱,混合エントロピ変化を導出した。Cd-Te2元系のカドミウムの活量は,Raoul則より大きく負に偏倚し,テルルの活量は僅かに正に偏倚した。また,Cd-Te2元系の混合エントロピ変化は,化合物組成で負の値を示し,融体中にchemical short range orderが存在していることを示唆する。 5)Cd-Te2元系融体のalpha関数は,組成に対し曲線を呈し,単純な溶液モデルには従わないことが分かった。 6)活量結果に基づき,蒸気圧-組成相関図を作成した。CdTe化合物組成,融点1337Kにおいて,TeとCdの蒸気圧を合計した有効蒸気は,0.817atmと決定された。
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