Research Abstract |
本研究は,肝臓特異機能を保持している肝実質細胞と非実質細胞を,高機能を長期に発現させる培養形態である凝集体(スフェロイド)の形態で混合培養することにより,凝集体の高機能化を図ることを目的とした. まず,国内で過去に樹立された数種の肝臓由来正常細胞株を入手し,ラット初代培養実質肝細胞と混合比1:1で単層培養を行い,アルブミン分泌能を指標として,最も効果のある細胞株を選択した.その結果,実質細胞のみでは約1週間でアルブミン分泌能を消失するが,胆肝上皮由来と考えられるRLNB-2細胞と実質細胞を混合培養すると,約1カ月にわたり高いレベルのアルブミン分泌が維持されることが確かめられた. そこで次にこの株を大量培養し,混合培養スフェロイドの迅速形成を旋回培養によって試みた.まず,混合比を1:1に固定し,連続撹拌状態で旋回時の機能と細胞障害,および固定化後の機能発現を測定した.その結果,非実質細胞の共存により,細胞凝集が阻害され障害は増し機能発現は低下することが判明した.単層で培養した両細胞の上への実質細胞の付着性を検討したところ,実質細胞同士の付着速度に比較して,実質細胞と非実質細胞の付着速度は,約1/10であった.そこで,間欠的に撹拌することにより,細胞同士に十分な付着時間を与えることを試みた.長すぎる間欠停止時間は酸素不足による細胞死を招いた.さまざまな検討の結果,5分おきの間欠撹拌を行うことにより,良好な状態の混合培養スフェロイドを形成させ得ることを見い出した. 当初予定した最終目標までには至らなかったのは,選択した細胞株の増殖が遅くしかも途中で自然に形質転換を起こしやすいために,大量の細胞を得るのに非常に時間がかかったためである.しかしながら,酸素欠乏を起こさず細胞同士に適当な接触時間を与える間欠撹拌法は付着性の異なる細胞同士から混合培養凝集体を迅速形成させるために,有効な方法であることが明らかにされた.今後,形成された混合培養スフェロイドについて,アルブミン分泌能以外の高度な機能,特に解毒酵素群の活性など測定した後に,学会等で発表する予定である.
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