ロジウム錯体触媒によるアルカンの熱的脱水素反応と電子構造解析
Project/Area Number |
05750730
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
工業物理化学
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
板垣 弘昭 東京大学, 工学部, 助手 (00203076)
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Project Period (FY) |
1993
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1993)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1993: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | ジヒドリドロジウム錯体 / アルカン脱水素反応 / 水素脱離過程 / 量子化学解析 |
Research Abstract |
【序】Wilkinson錯体RhCl(PR_3)_3は還流条件を課すだけでシクロオクタンの脱水素触媒活性を示すが、反応中間体の単離が難しく、反応機構に関する詳細な検討は困難である。本研究では、中間体の単離が可能なRh(O_2CPh)(H)_2(PR_3:PCy_3,P(CH_2Ph)_3,PPh_3)錯体を用いて、加熱のみによるシクロオクタン脱水素反応を行なうと共に、重要な素過程である水素脱離過程について実験・理論(量子化学)の両面から検討を行なった。 【結果と考察】脱水素反応:Rh(eta^2-O_2CPh)(H)_2(PPh_3)_2は単独および3倍mol量のPPh_3を添加しても、シクロオクタン脱水素活性を示さず、溶液はいずれも黒褐色を呈した。またRh(eta^2-O_2CPh)(H)_2(PCy_3)_2は単独およびPCy_3添加でも1.0ターンオーバー程度の活性を示すのみで、溶液はいづれも白色を呈した。一方、PPh_3とPCy_3の中間的電子供与性・嵩高さを持つP(CH_2Ph)_3の配位したRh(eta^2-O_2CPh)(H)_2(P(CH_2Ph)_3)_2は、0.6ターンオーバーの活性を示し、溶液は黒褐色となった。次にP(CH_2Ph)_3を添加したところ、溶液はRh(O_2CPh)(P(CH_2Ph)_3)_3の生成により赤褐色に止まり、活性は3倍mol量添加で1.8ターンオーバーに増量した。 水素脱離反応:Rh(eta^2-O_2CPh)(H)_2(PR_3)_2(R=Ph,CH_2Ph)のトルエン溶液を加熱(100℃,5分程度)したところ溶液は白色から黒褐色に変化し、水素とRh(eta^2-O_2CPh)(PR_3)_2を与えた。他方、Rh(eta^2-O_2CPh)(H)_2(PCy_3)_2では、加熱してもPCy_3を添加しても錯体の変化は起こらなかった。量子化学計算から、PPh_3,P(CH_2Ph)_3錯体で水素脱離が容易なのは、脱離後の錯体でホスフィンが互いにcis位をとり得るのに対し、PCy_3錯体では立体的嵩高さから、cis位をとるのが難しいためと、解析された。 【結論】PPh_3の強い電子吸引性はRh(O_2CPh)(PPh_3)_3の生成とC-H結合切断を難しくし、PCy_3の嵩だかさと電子供与性はRh(O_2CPh)(PCy_3)_3の生成と水素脱離を困難にしていると考察される。脱水素触媒反応を進行させるには、P(CH_2Ph)_3のような適度な電子供与性・立体的嵩高さを持つホスフィン配位子を選ぶ必要がある、との結論を得た。
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Report
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Research Products
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