Research Abstract |
1.最近の2,6-ジメトキシフェルニ基(以下phi基と略記)を含む強求核性有機リン化合物phi_3P=Y(Y=S,Se)等の結晶構造が明かになりつつある。phi_3P=S,H_2O^<1,2)>とphi_3P=Se,H_2O^<2)>の結果から、phi_3P=Yは、1)Ph_3P=Yに比べてP-Y距離が長いこと、及び2)メトキシ酸素とリンの距離が、酸素とリンのファンデルワールス半径和よりも短いことがわかった。この結果は、酸素からリンへの直接的電子供与によりP-Y結合がP^+-Y^-に分極し、Y上の電子密度が上がって求核性がPh_3P=Yに比べて上昇したと解釈できる。 有機リン化合物及びその誘導体{phi_3P=Y(Y=O,S,Se)及びphi_3As、phiY'Y'phi(Y'=S,Se,Te)等}の誘電物性研究の第一段階として、結晶構造が未知であったphi_3As及びphiSSphiのX線構造解析及び溶液・固体状試料の誘電測定プローブの作製、溶液状試料に対する測定を行った。 2.phi_3As及びphiSSphi^<3)>は構造決定が完了し、Ph_3As及びPhSSPhとの比較検討を行っている。 3.phi_3P=Y(Y=O,S)の分子分極率をPh_3P=Y(Y=O,S)と比較するためにこれらのベンゼン溶液の誘電率を、当補助金により導入した誘電率測定器と自作した簡易電極により実測した。現段階では、phi_3P=Y溶液の誘電率の濃度依存性とPh_3P=Yのそれとの間には、現在のところ顕著な差は見いだされていない。 4.固体有機ヘテロ元素化合物のための誘電率測定用プローブの作製が完了した。 参考文献 1)Hayase et al.,Acta Cryst.Cin printing. 2)日本化学会第66秋季年会講演予稿集(関学大)1993,P166,3B316. 3)日本結晶学会予稿集(学習院大)1993,P25,18P-11.
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