Research Abstract |
本研究は,“イネ科作物の節間の長さが,伸長に関与する分裂組織の分化時期の遅速によって決定される"という申請者の仮説を検証することを第1の目的とした.また,本目的を達成する上での方法上の必要から,各種分裂組織の分化のマーカーを免疫組織学の手法を用いて確立しようとした. まず,分裂組織の分化マーカーの確立にあたっては,近年,細胞の分裂面や伸長方向の制御の担い手として注目されている細胞内微小管の形態に着目した.微小管タンパク質の抗体を用いて様々な発育段階にあるトウモロコシ節間の細胞を免疫染色したところ,節間伸長に関与する分裂組織が,微小管の配列に特異な特徴を備えているという新知見が得られ,また,このことを応用することにより,この分裂組織の有無を,それが単一の始原細胞層として分化するような初期段階にまで遡って,同定できるようになった. つづいて,上記した手法によって様々な節位の節間における分裂組織の活動期間を同定し,それらの節間の最終長と較べた.その結果,節間の長短は第1義に節間分裂組織の活動期間の長短に規定されていることが明かとなり,“節間の長さは伸長に関与する分裂組織の分化時期の遅速によって決定される"という当初の仮説は,節位別の節間長の変異をよく説明する,という結論を得た. このように,節間分裂組織の分化のタイミングが節間長の主要な制御要因である,という事実が本研究によって明らかとなったため,目下,研究テーマを節間分裂組織分化の分子機構の解明へと拡張させつつある.具体的には,節間分裂組織の分化に密接に関連すると考えられる微小管タンパク質遺伝子(あるいは各種の微小管関連タンパク質遺伝子)の節間内での発現をin situ ハイブリダイゼーション法で検出することを試みている.
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