Research Abstract |
1985年に京都市街地においてニレ科樹種の調査を行い,樹木の位置を記録し胸高直径を測定してあり、今回その追跡調査を行った.その結果,都市域のニレ科樹種個体群の動態に関して以下のことが明らかとなった. 残存個体で枯死立木はほぼみられなかった.伐倒消失個体は,さほど多くなかったが,道路沿い,あるいは,駐車場などの空地においてみられた.伐倒対象個体のサイズは,様々であったが,今回の調査ではその数が少なく,消失個体のサイズ依存性等を明らかにすることはできなかった. 残存木の生長に関しては,胸高直径が40cm前後までの小径木あるいは中径木の生長率が大きく,サイズが小さいほど生長率が大きかった.調査地域全体の胸高直径階分布をみると,胸高直径が30cm前後に分布のモードがみられた.小径木の生長が非常に早いこともその要因の1つにあげられると考えられた. 残存木の更新は,特に残存地の土地利用形態あるいは土地所有形態によるところが大きかった.粗放な管理状態にある場において更新が顕著であった.具体的には、社寺林の林縁,空地や民家の庭の周縁,非管理の竹林,あるいは,河川堤防空地などがあげられた.ムクノキとエノキは種子が鳥によって散布されるために種子散布能力が高いが,更新がみられる場は限られていた.ニレ科樹種は,耐陰性が低くうっ閉した樹林では更新がみられず,一方管理圧の大きな場でも更新はみられない.その中間的な立地で更新がみられることが明らかとなった. 聞き取り調査から,ニレ科の大径木の残存に関して,建坪率が低い土地にある大径木よりも,むしろ建坪率が高い密集地の大径木に対して残存要求が大きいことが明らかとなった.
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