Research Abstract |
水田で問題となっている多年生雑草は一般に栄養繁殖と種子繁殖の能力を合わせ持っているが,通常はほとんど栄養繁殖に依存しているとされている.しかし種子繁殖は稀にしか起こらなくても集団の遺伝的多様性の維持に大きな役割を果たしていると予想され,また新しい生育地への伝播も種子によっている可能性が大きい.このような現象を解析するためにはDNAフィンガープリンティングが有効であると考え,代表的な多年生雑草オモダカ,ミズガヤツリ,クログワイおよびキシュウスズメノヒエを対象にその適用可能性を検討した. まず,DNAの抽出・精製をいくつかの方法によって試みた.いずれの種も多糖類などの夾雑が多く,DNAの精製がかなり困難な部類に属することがわかった.最終的にはCTAB法で抽出した粗DNAにフェノール抽出を繰り返すことによって使用に耐えるDNAを得ることができたが,これは非常に手間がかかるので今後の工夫が必要である.またミズガヤツリではほとんどDNAを得ることができなかった. つぎにDNAが得られた3種について単純反復配列オリゴヌクレオチドプローブ数種を用いてフィンガープリンティングを試みた.3種のいずれも(GATA)_4プローブによってフィンガープリントを得ることができた.この場合の制限酵素はオモダカではTaqI,クログワイとキシュウスズメノヒエではTaqIおよびHinfIが適当であった. 以上のように主要な水田多年生雑草3種についてDNAフィンガープリンティングが適用可能であることがわかった.今後は実際に水田の集団の解析を行なっていく予定である.
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