Research Abstract |
1.平成4年11月と平成5年5月に三重大学所属練習船勢水丸に乗船し,太平洋黒潮域および亜熱帯海域より海水試水を得た。表層から500m層まで各点5深層の海水試料につき低栄養液体培地(ST10^4)を利用したMPN計数を試みると同時に,約401の海水からホローファイバーシスエムを用いて細菌画分を濃縮・捕集した。また,外洋海水を含む低栄養培地でのみ増殖可能な偏性低栄養細菌を28株新たに分離し,保存することができた。また,琵琶湖湖水より“天然湖水培地"と“微細藻類由来の有機物低濃度培地(EOM培地)"を用いてやはり24株の偏性低栄養細菌を分離した。このうち日本海産海洋細菌5株,湖沼細菌3株から細菌からDNAを抽出し,PCR法により増幅した16SリボゾームRNA遺伝子の一部(約1-500,E.colinumbering)の塩基配列を決定した。以上の実験において微量の海洋細菌試料からのDNA抽出,PCR法から塩基配列決定の過程で今回備品として購入した冷却装置付き微量高速遠心機を高頻度で利用している。 2.日本海若狭湾50m深の海水から分離した偏性低栄養細菌群5株の16SrRNA遺伝子の部分塩基配列を解析したところ,いずれもg-proteobacterialサブグループに属することが明らかになった。しかしこのグループの既知の海洋細菌とはいずれも80〜85%のホモロジーしかなかった。このことから外洋偏性低栄養細菌群集を構成している細菌は既存の方法では検出されない細菌である可能性が示唆された。一方琵琶湖から分離された偏性低栄養細菌のうち珪藻EOM培地で分離された2株の16SrRNA遺伝子の塩基配列は,いずれも95%以上の相同性で既知のFrexibacter属の細菌のそれと一致したが,Staurasturum-EOC培地で分離した1株のそれは既知のいかなる真性細菌とも異なった。
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