Research Abstract |
魚類の松果体は直接光を受容し環境の明暗に応じ暗期にメラトニンを分泌することから,環境の明暗情報を伝達するメディエーターであり,このメラトニンリズムの変化により繁殖期の決定がなされていると考えられている。しかしながら,魚類においていてメラトニン投与により繁殖期を制御する試みはほとんどされていないのが現状である。そこで本研究においては,魚類の繁殖期をメラトニン投与により人為的に制御する技術の確立を目指して,効果的なメラトニン投与法の確立を試みた。 メラトニンの魚類に対する投与法を開発するため,腹腔内注射,餌料に混ぜての経口投与,浸漬,サイラスティックチューブによるインプラントを試みた。その結果,いずれの方法も有効であった。慢性的に投与する場合には,インプラントが,急性的に投与する場合には経口投与が優れているように思われた。 メラトニンは脳内メラトニン受容体を介して作用していると考えられている。最も受容体数の多い時刻にメラトニン投与を行なうのが最も効果的であると予測されるので,効果的メラトニン投与時刻を決定するために脳内メラトニン受容体の日周リズムについても検討した。LD12:12(明期6-18時)の条件下で飼育したキンギョより,16,20,0,4,8,12時に脳を採取しラジオレセプターアッセイにより検討した結果,受容体数は16時に最大値を示した後,暗期に入って減少し,4時には最低値を示した。その後,明期になると増加した,また,親和性は変化しなかった。これらの結果は明期から暗期に入る時間帯にメラトニンに対する感受性が最大になることを示唆している。 今後は本研究の成果を活用して,メラトニン投与により魚類の繁殖期を制御する技術が開発されることが期待される。
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