Research Abstract |
1.外因性発熱物質として知られるリポポリサッカライド(LPS),およびLPSによって誘導されるサイトカインの一つであるインターロイキン1(IL-1)が交感神経系に及ぼす作用を家兎を用いて検討した。 2.発熱物質の引き起こす交感神経系の応答においては,麻酔による影響が反応の方向性をも変えてしまうほど大きいため,本実験は全て意識下,かつ手術から充分な回復期間をおいた状態で遂行した。また,より長時間の慢性記録を可能とするために,生体に適合性の高い慢性埋め込み型電極を試作した。慢性電極より得られた神経束の集合電位は,備品として購入した高感度低雑音の電極用増幅器を用いて処理した。 3.LPSの静脈内投与によって,体温の上昇期に一致した皮膚交感神経活動の亢進と,遷延する腎交感神経活動の亢進が引き起こされた。この時,血圧の低下と心拍数の上昇を認めた。また,LPSの投与量を減じて血圧の低下が引き起こされない条件で観察しても,腎交感神経活動の亢進は依然として認められた。 4.IL-1alphaの静脈内投与によって,LPSと同様な皮膚交感神経活動と腎交感神経活動の亢進が引き起こされた。この反応は,基本的にアラキドン酸カスケードをインドメタシンで阻止することによって抑制された。 5.以前の研究においてLPSによる交感神経活動の亢進が血圧低下によって二次的に引き起こされる圧受容体反射による可能性が指摘されていたが,本実験はこの可能性を否定し,LPSには本質的に皮膚および腎交感神経活動を亢進させる作用のあることが分かった。また,IL-1によって,LPSと同様な交感神経応答が引き起こされたこと,またその反応が,インドメタシンによって抑制されることより,LOS→IL-1→アラキドン酸代謝産物,という一連の液性情報の伝達が,発熱時の交感神経応答の発現に深く関与しているものと考えられる。
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