Research Abstract |
Calsequestrin(CS)はウサギ骨格筋,Calreticulin(CR)は牛肝臓から精製し,それぞれをウサギに免疫し抗体を作成した。鶏胎児培養骨格筋を用い,蛍光抗体法及びWestern blottingにより筋細胞では分化に伴いCa貯蔵蛋白がCRからCSにおき変わることを明かにした。次に正常成熟ラット心筋凍結切片,培養心筋,人心筋組織での心疾患生検21例でCS,CRの存在様式について検討を行なった.CSは正常ラットおよび人心組織では筋原線維のZ帯付近に規則的な縞状構造として存在し,CRはほとんど認められなかった.培養心筋では,CS陽性SRは,筋原線維と強い親和性を示しながらダイナミックに構成され、培養液にnocodazoleを加え微小管を脱重合することにより、この過程が微小管に依存することが明かになった.正常成熟心筋には認められなかったCRは,長期培養に伴い脱分化細胞で,核周囲に非筋細胞のER様の網状構造として認められた.さらに、拡張型心筋症など心疾患生検組織で,CSの膜直下の異常集積像や,正常では見られないCRの発現が見られた.以上よりSRは動的な構造であり,病的状態で容易に構造変化を生じうることが示された.また,脱分化した培養心筋や心疾患時に見られたCRの発現は,ミオシン重鎖などで報告されているような病的心筋での一種の胎児型遺伝子の再発現と考えられる。逆にこのようなSRの構造変化やCa貯蔵蛋白の変化が、最近注目されている心疾患時の筋小胞体の機能不全の一因となっている可能性も示唆された。
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