Research Abstract |
LPS刺激によるマウスマクロファージからのTNF,IL-1産生でのProtein Kinase阻害剤の影響を検討したところ、強力なPKC阻害剤として知られるStaurosporineが両サイトカインの産生を強く抑制すること、またカルモジュリン阻害剤W-7はIL-1産生のみが抑制され、PKCはTNF,IL-1両者の産生に関与するが、それぞれの産生に到るシグナルには別の経路が働いている可能性が示唆された。しかし、より特異性の高いPKC阻害剤であるCalphostin Cでは、IL-1産生およびIL-1mRNA発現は強く抑制されるもののTNF産生に及ぼす抑制効果は弱く、またTNFmRNA発現は抑制されなかった。これはIL-1産生系はPKC依存性が高いが、それに比してTNF産生系のPKC依存性は極めて低いと考えられる。StaurosporineはPKCの強力な阻害剤であると同時にAkinaseやtyrosine kinaseへの阻害作用も指摘されておりStaurosporineによるTNF産生の抑制効果は種々のkinase阻害作用が複合して現れた可能性がある。一方、LPSにより誘導される65kDaタンバク質のリン酸化はStaurosporine存在下で強く抑制され、H-7,Calphostin C,ならびにW-7により部分的に抑制された。これらの結果は、Staurosporine感受性のカイネースが65kDaタンバク質のリン酸化をひきおこし、さらにこのカイネースの活性がPKCにより調節される可能性を示唆する。IL-1mRNA発現と比較すると65kDaタンバク質リン酸化の阻害剤に対する感受性は低く、LPSシグナル伝達における65kDaタンバク質のIL-1,TNF産生系への関与は明らかでない。 Salmonella生菌感染により72kDaおよび85kDaタンパク質をはじめとする数種類のマクロファージ細胞内タンパク質のリン酸化が認められた。これらのタンパク質の意義についてはこれからの検討課題である。 残念ながら、本年度はリン酸化タンパク質の精製およびクローニングによる詳細な解析には到らなかった。
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