Research Abstract |
インターフェロン調節因子(IRF)-1,-2は、インターフェロン(IFN)-alpha,-beta遺伝子の上流の(AAGTGA)n配列に結合し、IFN遺伝子の転写を調節する因子として知られている。ヒトパピローマウイルス(HPV)などのDNA腫瘍ウイルスの初期遺伝子産物がIRF-1,-2の転写制御能を修飾する活性を持っているか否かを検討した。 1.まず、(AAGTGA)n配列をIFN-betaの最小プロモーターの上流に挿入したルシフェラーゼ・レポーター・プラスミド(pClBluc)を作製した。 2.F9細胞に上記レポーター・プラスミドを導入しても、ルシフェラーゼの発現は見られなかった。このことはF9細胞も未分化P19細胞と同様IRFの内在性発現がないことを示唆している。 3.F9細胞にIRF-1発現プラスミドをpClBlucと同時に導入し発現させると少なくとも100倍以上のルシフェラーゼ発現が誘導された。 4.この系にさらにIRF-2を発現させると、報告されているようにルシフェラーゼ発現は強く抑制された。 5.同様に3.の系にさらにアデノウイルス(Ad)2型E1Aを発現させるとIRF-2の場合と同様にルシフェラーゼ発現は強く抑制された。この抑制はAd2型12SE1A、13SE1Aそれぞれ単独でも、またAd12E1Aでも見られた。 6.しかし、3.の系にさらに種々の型(1,5,8,11,21,16,18,47)のHPVのE6あるいはE7を発現させた場合には、ルシフェラーゼ発現はほとんど変化しなかった。 以上の結果から、癌原性やトランスフォーム能の有無にかかわらず、HPVのE6,E7はIRF-1による転写活性化能の修飾には関与していないことが推測された。一方、Ad E1AはIRF-1による転写活性化を抑制する可能性が示唆された。この抑制活性が、レポーター遺伝子の(AAGTGA)n配列を介しているか、あるいは、IFN-beta最小プロモーター配列を介しているか、さらには内在性のIRF-2の発現を介しているかなどを、今後見極める必要がある。
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