Research Abstract |
熱傷性ショックにおける多臓器不全の発生メカニズムの更なる解明を目的とし,まず肝臓について検討した。 【方法】ネンブタール麻酔下のラットの一側下肢を75℃・1分間熱湯へ浸漬した。このモデルをA群(熱傷直後),B群(3時間後),C群(6時間後)およびD群(24時間後)にわけ,対象群と共に麻酔下で脱血屠殺した。血清中のGOT,GPT,NPN,BUN,CPK,LDHを定法に従い測定し,熱傷部の筋肉の湿重量と乾燥重量の比を浮腫度とした。光顕,透過型電顕法により,組織学的変化を観察した。 【結果】熱傷受傷後に死亡する例はなかった。熱傷部の浮腫度はA群及びD群では変化が認められなかったが,B群およびC群で著明に増加した。血清中の各酵素はいずれもA群では対照群に比して変化が認められなかったが,B群およびC群では有意に上昇した。組織学的に光顕では,A群に著変は認められなかった。B群では血管内皮細胞の腫大,変性および部分的な剥離など血管壁細胞の障害および血管周囲の浮腫が認められた。肝細胞の好酸性化などを含む肝細胞壊死が小葉中心性に認められた。C群では上記の所見がやや高頻度に認められたが,他に著変は認められなかった。D群では著変は認められなかった。電顕では,B群で肝ジ-ヌソイドにおける血管内皮細胞に空胞変性が認められ,肝細胞の浮腫を主体とした変性も認められた。C群では上記の所見が高頻度に認められた。D群では著変は認められなかった。 【結論】熱傷性ショックにおいて,受傷後3時間以降に熱傷部の浮腫とともに肝機能障害を認め,肝臓血管内皮細胞障害および肝細胞壊死など肝実質の障害像も観察された。今後これらの障害とケミカル・メディエーターとの関係および他臓器の組織学的変化をも併せ検討する予定である。
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