Research Abstract |
我々は,craniosynostosis(CRS)が認められたde novoの相互転座t(6;7)の1症例を経験し,CRS遺伝子の局在位置に関して検討した.症例は,3歳の男児.体重10.8kg(-2.1SD),身長87.0cm(-1.8SD),頭囲46.5cm(-1.7SD)で,軽度の精神発達遅滞を認めた.また,尖頭,前額狭小,瞼裂縮小,逆内眼角贅皮,眼球突出,長い睫毛,前向きの鼻孔,耳介低位,カップ状の耳介,高口蓋,上前切歯の癒合を有する特異な頭部顔面の異常が認められた.頭部X-Pでは,冠状,矢状,前頭縫合の早期融合と指圧痕の増強が認められた.染色体分析の結果,6番および7番染色体に均衡型の相互転座が認められ,染色体核型は46,XY,t(6;7)(ql6.2;p15.3)de novoであった.6番染色体長腕中間部欠失の症例ではCRSの合併は報告されておらず,本症例に認められたCRSは7pの切断点と関連する.1985年以降に報告されたCRSを合併した7p-の症例では,7p15.3バンドの欠失が共通しており,均衡型転座である本症例は,切断点7p15.3にCRS遺伝子が局在することを示す重要な症例と考える.分子遺伝子学的検討では,7p15-p14にマップされており形態発生に関わると考えられるホメオボックス11遺伝子プローベ(c2A/4.5)、7p21-p14にマップされ破骨細胞の増殖に関わるインターロ-イキン6遺伝子(pbeta2.15)のサザンブロット解析では異常を認めなかった。しかし、7p22-p14にマップされている単一遺伝子TM102Lのサザンブロット解析では、患児は、母親由来のバンドのみで、父親のアリルが欠失しており、遺伝子の再編成が検出された。このことは、TM1O2Lのごく近傍にCRSの遺伝子座位が存在する可能性を示しており、TM102Lをマーカーとして遺伝子の単離を進めて行きたい。
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