Research Abstract |
ウイルス関連血球貪食症候群(VAHS)は、ウイルス感染を契機に発症する発熱、汎血球減少、播種性血管内凝固症候群(DIC)、肝脾腫を主徴とする血球貪食症候群(HPS)のひとつである。本症は貪食活性の高い反応性の良性組織球増殖性疾患であるが、臨床的には悪性細網症(MH)、および家族性赤血球貪食性リンパ細網症(FEL)との鑑別が困難な予後不良例も存在する。今回当科で経験したVAHS18例をまとめ、Epstein-Barr virus(EBV)が発症に関与したと考えられる例を中心に炎症性サイトカイン(インターリュウキン(IL)-1beta、腫瘍壊死因子(TNF)、インターフェロン(IFN)gamma)を測定し免疫学的検討を行った。 1.VAHS18例の臨床像 VAHS18例を同じ10年間に経験したMH7例、FEL3例と比較した。VAHSは女児に多く(M:F=5:13)、リンパ節腫脹がめだち(p<0.05)、初発時の白血球数減少が著明であった。VAHSは83.3%が生存、MHとFELは全例死亡した。このVAHS18例を軽症群(無治療または抗生剤のみ使用)、中等症群(Predonine、gamma-globulin使用)、重症群(VP16使用)に分けそれぞれの臨床検査所見を比較した。性、年齢に差はなかった。中等症および重症のDIC合併率が高かった。またGOT・LDH・フェリチンは重症ほど高い傾向にあった。軽症群は全例生存、VP-16を使用した重症群の生存率は33.3%であった。 VAHSにおける炎症性サイトカイン VAHS活動期の患児の血清中TNFおよびIFNgammaは寛解期に比して著明な高値であった。IL-1betaはほとんどが感度以下であった。IFNgamma濃度は白血球数(gamma=0.585,p<0.05)、LDH(gamma=0.538,p<0.05)との間に正の相関を、CD4/8比(gamma=-0.618,p<0.05)との間に負の相関を認めた。血清TNF値はIFNgamma値と相関した(gamma=0.546,p<0.05)。この炎症性サイトカインを経時的に測定したときIFNgamma濃度は患児の重症度をよく反映していた。増悪期は寛解期に秘史CD4/8比が低く、CD8^+優位のCD3^+HLA-DR^+細胞が増加していた。一方、CAEBVの症例のみCD4^+HLA-DR^+細胞が増加した。IFNgammaはVAHSの病態に関与し病勢を反映する有力な指標である考えられた。
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