Research Abstract |
平滑筋には,同一遺伝子よりRNAのスプライシングの差により生ずるSM1,SM2の2種類の平滑筋タイプミオシン重鎖(MHC)と,NMA、NMBの2種類の非筋タイプMHCが存在することが知られている。しかしながら,これらのMHC蛋白アイソフォームが有する生理学的機能については,未だ確認されていない。心筋においては,alphaおよびbeta-MHC蛋白アイソフォームがそれぞれ異なった生理機能を有していることがある程度解明されており,心臓にかかる生理学あるいは病理学的な負荷に対して,これに適合するように発現が制御されていることが確認されている.平滑筋,特に血管平滑筋においてもMHC蛋白アイソフォームが存在するということは,心筋と同様種々の生理的状況下において,これらのアイソフォーム発現が変化してくることが予想され,生理的適応を行っている可能性が考えられる。 本研究ではこのような疑問に答える第一歩として,培養血管平滑筋細胞に機械的張力負荷をかけることにより,この細胞内のMHCアイソフォーム遺伝子発現がどのような変化を示すのか検討した。その結果,細胞に張力負荷がかかることにより,平滑筋タイプMHC遺伝子発現が,非筋タイプMHC遺伝子発現と比べ相対的な増加を示した。さらに平滑筋タイプMHCのうち,明らかにSM2-MCH遺伝子発現が増加することが確認された。このことより,SM2-MHCはSM1-MHCと比べ細胞にかかる物理学的負荷に対して適応するために大きな役割を担っている可能性が考えられた。また本研究においてc-fos,c-myc,c-Ha-ras遺伝子発現を合わせて検索したが,従来の報告と同様,張力負荷を加えて15〜30分後にはc-fos遺伝子発現が認められ,MHCアイソフォームの変換機序の一端を担っている可能性が示唆された。
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