Research Abstract |
古典的な実験的表皮増殖系であるtape-stripping系は現象的に尋常性乾癬の病態に酷似することが知られている。またC-mycおよびP-53が豚表皮細胞周期に与える影響は不明である。今回われわれはtape-stripping系を豚表皮に応用し、継時的に観察して、S期持続時間を測定し、角層の交代時間を含め、表皮turn over timeを算出した。またC-myc,P-53についてはABC法(免疫組織学的)で検討した。加えてヒト正常表皮の交代時間、乾癬皮疹部表皮および乾癬無疹部の交代時間も算出した。またG1,G2期の細胞周期の進行はprotein kinaseが関与していることがしられており、代表的なPKC(protein kinase C)inhibitorである。スタウロスポリンと、よりPKCに特異的なinhibitorであるカルフォスチンCの豚表皮細胞周期に与える影響も比較した。さらにG1期短縮をきたすといわれているカルモジュリン量をtape-stripping後の豚表皮において測定した。 結果 1)継時的に採皮し、DNA-flow cytometry,サイミジン取込み、mitosis算定で検討したところ、豚表皮S期持続時間は12時間であると推定し、dansy chrolideの貼付試験による角層の交代時間は16daysであった。 2)表皮交代時間は豚で28.5days,ヒトで36.6daysとなった。 3)C-mycは乾癬皮膚、tape-stripping後の豚皮膚に弱陽性であったが、P-53は陰性であった。4)スタウロスポリンは10muMで、カルフォスチンCは50muMで豚表皮DNA合成を抑制し、後者は可逆的な変化であった。後者はより選択的にG1集積をきだした。 5)tape-stripping 24時間後、36時間後ではコントロール皮膚に比べカルモジュリン活性が亢進していた。 6)CAF-200(細胞内ion analyser)による細胞内カルシウムの測定ではtape-stripping後の皮膚がコントロールに比べ高値を示した。 まとめ tape-stripping系を用いることにより、豚もしくはヒト表皮細胞のcell cycle、turn over taimeの測定が可能になり、G1期への進行にはC-myc,P-53の関与もあるが、protein kinaseの関与がより重要である可能性が示唆された。さらに増殖亢進時にカルモジュリン量の増加、(Ca^<2+>)iの増加がみられたことから細胞周期の進行にCa^<2+>-カルモジュリン系の正の調節を行っている可能性が示唆された。
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