Research Abstract |
インスリン依存性糖尿病(IDDM)の発症遺伝子を解明し、IDDMの発症前診断、発症予防に役立てる目的で、最近、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)領域にマップされ、抗原提示に関与する抗原輸送担体(TAP:Transporter associated with Antigen Processing)遺伝子および抗原のprocessingに関与する遺伝子(LMP:Low molecular weght polypeptide)とIDDMの疾患感受性との関係をヒト、モデル動物の両面から解析した。モデル動物であるNODマウスでは、遺伝子変異が発症に関与するとされてきたTapl遺伝子の多型が、IDDMを発症しないNODの関連系統のなかにも見いだされることが明かとなった。この結果より、NOD固有とされてきたTapl遺伝子の多型はNOD固有ではないこと、さらにこの多型が単独ではIDDM発症には関与しない可能性が示唆された。今後この多型を有する関連系統のMHCをNODに導入したコンジェニックマウスを用いて、この多型とIDDM発症の関連性を追求する必要がある。一方、ヒトではTAP1,TAP2,LMP2遺伝子のアミノ酸置換を伴う遺伝子変異をIDDM患者および健常対照者で比較したが、両群間で対立遺伝子の頻度には全く差を認めなっかた。この両群間でHLAハプロタイプの頻度には明かな有意差を認めたことから、TAP1,TAP2,LMP2遺伝子はIDDMと一次的に相関する遺伝子座ではないことが明かとなった。今後、IDDMの遺伝的異質性にこれらの遺伝子が関与しているか否かを解析する必要がある。
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