Research Abstract |
A/Jマウスに化学発癌物質4-Nitroquinolin 1-Oxideを投与する肺発癌モデルを用いて,対照群,胸腺移植群(新生児胸腺を3回,腹腔内に投与移植),胸腺摘出群(5週齢にて胸腺摘出)の3群で発生肺腫瘍,免疫能について比較検討した。 発生肺腫瘍の検討:実験第20週の時点で胸腺移植群の肺腺腫+肺腺癌の発生率は対照群に比べ減少したが,実験第24週時点では胸腺移植群と対照群に差は認められなかった。胸腺摘出群では実験第24週において対照群,胸腺移植群と比較して肺腺腫+腺癌の発生率は増加した。これらの肺腫瘍は過形成から腺腫,腺癌へと進行すると考えられており,実験第20週といる腫瘍発生の早期段階では胸腺移植により腫瘍の進行(悪性化)が抑制されうる事が示唆された。また,マウスの胸腺は4〜6週齢で最大になるが,この時期の機能性胸腺の摘出は腫瘍の悪性化を促進する事が確認された。 免疫指標に及ぼす影響:脾細胞数は新生児胸腺移植により増加,5週齢での胸腺摘出により減少した。脾リンパ球サブセットにおいては,胸腺移植によりTリンパ球の割合は増加,Bリンパ球の割合は減少,CD4,CD8リンパ球は増加,逆に5週齢での胸腺摘出によりTリンパ球の割合は減少,Bリンパ球の割合は増加,CD4,CD8リンパ球は減少した。脾細胞幼若化試験では,胸腺移植により脾細胞の自然増殖能,PHA刺激増殖能は大幅に増加し,5週齢胸腺摘出によりPHA刺激増殖能は減少した。LPSによる増殖能は3群間で差はみられなかった。 今後の研究:機能異常を伴った胸腺の摘出は明らかに免疫系に影響を与える。加齢に伴い胸腺ではサプレッサー能が増加することが多くの実験で認められており,加齢胸腺の摘出も免疫系に好影響を与える可能性がある。今後の研究では,加齢マウスの胸腺摘出術が発癌,免疫系に与える影響を検討する。
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