Research Abstract |
1.ラット分離肝細胞をコラゲナーゼ潅流法によって採取し,lysis buffer処理によりDANをnuclecoidの状態で抽出し,種々の濃度のethidium bromide(EB)を加えた際のnucleoidの大きさの変化をFlow cytometryによる前方散乱光の変化で測定したところ以下の結果を得た。1)分離肝細胞採取の過程により生ずると思われるDNAの損傷により,lysis buffer処理後に多くのDNA断片がみられた。2)EB蛍光強度によりgatingを行い,debrisを除いた状態でnucleoidの前方散乱光の変化をみるとEBの濃度の上昇とともに一旦増大し,さらに濃度を上げると縮小するという予想された変化を示した。3)しかし,in vivoの実験系では,上記の肝細胞分離過程における肝細胞DNA障害を無視できないため,培養細胞系を用いて,本法の妥当性を評価することにした。 2.ヒト肝癌細胞株Hep G2を用いて,障害機序として温熱処理およびThioacetamide(TAA)処理を行った後,温熱処理の場合は直後に,TAA処理の場合は24時間後に本法を用いてDNA損傷の評価を行い,以下の結果を得た。1)温熱処理では,温度および時間依存性にnucleoidの縮小化は妨げられた。すなわち,nick translationによるDNA損傷度の評価と同様の傾向が本法でも測定し得た。2)TAA処理では比較的低濃度の10mMではnucleoidの縮小化は妨げられたものの,高濃度の50mM,100mMでは逆にnucleoidは対照群より縮小し,濃度依存性の変化を得えることはできなかった。 3.以上から,本法のDNA損傷度の評価をin vivo実験系に適用するには,その検体処理にさらなる工夫を要することが判明した。また,本法は癌細胞の温熱療法後のDNA損傷度の評価に有用であり,治療効果あるいは治療感受性の評価に応用できる可能性が示唆された。
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