Research Abstract |
膵頭部領域癌のうち膵頭部癌30例,下部胆管癌14例,乳頭部癌13例を対象とし,各症例において増殖因子である上皮増殖因子受容体(EGFR),核の増殖能の指標としてのKi-67,間質因子としてのtenascin,癌遺伝子としてのc-erbB-2の4つの指標の発現の有無を検索し,組織学的因子や予後との関係を比較検討した。まずそれぞれの陽性率をみるとEGFRの陽性率は3者とも20%前後と低率で3者間に有意差は認めなかった。Ki-67の陽性率は下部胆管癌と乳頭部癌ではそれぞれ37,38%であったのに対して,膵頭部癌では20.6%と有意に低率であった。tenascinの陽性率は乳頭部癌,下部胆管癌ではそれぞれ37,44%であったが,膵頭部癌では58%と高率であったものの有意の関係ではなかった。c-erbB-2の陽性率はいずれの部位でも52〜61%と高率であった。各臓器発生別に組織学的因子や予後と各指標の発現率の相関関係をみると膵頭部癌では漿膜浸潤とKi-67,c-erbB-2との間に,またリンパ節転移とKi-67の間に有意の相関関係を認めた。さらに3年未満癌再発死亡例ではKi-67,tenascinが3年以上生存例に比し有意に高率に発現していた。一方,下部胆管癌では各組織学的因子と4指標の発現の有無との間に有意の相関関係は認めなかった。さらに予後との関係をみても3年未満癌再発死亡例ではKi-67,c-erbB-2の発現が高い傾向であったが,有意の関係ではなかった。また,乳頭部癌ではStageや各組織学的因子との間には有意の相関関係は認めなかった。また,予後との関係をみると3年未満癌再発死亡例ではKi-67,tenascin,c-erbB-2の発現は3年以上生存例に比しいずれも有意に高率であった。以上,各種生物学的悪性度の指標は下部胆管癌や乳頭部癌では各組織学的因子との相関関係を認めないもののその予後との間で相関関係を認め,これらでは独立した生物学的悪性度の予後因子となる可能性をもつものと思われた。
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