Research Abstract |
1.目的 Hirschsprung病に類似した先天的な消化管の運動機能異常をきたす疾患の中で,壁内神経細胞は直腸末端までみられるが,壁内神経細胞が減少を示す群があるが,その減少の程度,範囲等の病態に関してはほとんど解明されていない。 2.方法 本研究では14例の先天的な壁内神経減少症例について臨床病理学的に検討した。病理学的にはLinder鍍銀染色,Ach-E染色及びNSE,S-100蛋白等の各種neuropeptideの免疫組織学的染色を行った。また壁内神経細胞の数および面積を計測し,壁内神経細胞の数の減少度および神経細胞の成熟度を検討した。胎児および新生児,乳幼児の対照例の腸管を検索し,正常発達過程を検討した。 3.結果 (1)新生児開腹時所見で約半数にmeconium ileusに類似した肉眼形態を示した。(2)直腸肛門反射は14例共明確な弛緩反射はなく,直腸肛門反射は陰性を示した。(3)直腸粘膜生検によねAch-E activityは,全例増強はみられなかった。(4)病理学的所見では壁内神経細胞の減少した異常腸管の部分は,検索の部位が限られているため正確な異常範囲は不明瞭なことが多かったが,ほとんど全結腸から小腸広範囲におよんでいた。(5)異常部位は全例,肛門側から口側に連続しており,肛門側が正常である症例はみられなかった。(6)神経細胞の減少の程度は,正常対照新生児例に比し著しい神経細胞の減少を認めた。計測した成績では、本症が7.51±4.5/cm(腸管)であり,対照例では64.60±11.6/cmであり,1/5〜1/10の著しい減少を示した。(7)Auerbach神経叢自体,その網状構造は著しく貧弱であり,その面積も1/5以下と小さく低形成を示した。(8)新生児期で検索された例では神経細胞の核面積,胞体とも小さく,未熟成を示すものが全例であった。しかし経時的に検索された例では徐々に増大を示し,2〜3才以降では対照例とほぼ同等の成熟性を示した。
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