直腸癌における神経接着分子(NCAM)の意義,特に神経周囲侵襲との関連について
Project/Area Number |
05770959
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Research Category |
Grant-in-Aid for Encouragement of Young Scientists (A)
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Field |
Digestive surgery
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
笹富 輝男 久留米大学, 医学部, 助手 (20196190)
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Project Period (FY) |
1993
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Project Status |
Completed (Fiscal Year 1993)
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Budget Amount *help |
¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
Fiscal Year 1993: ¥900,000 (Direct Cost: ¥900,000)
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Keywords | 神経接着分子 / 神経周囲侵襲 / 自律神経温存手術 |
Research Abstract |
直腸癌の手術の際に術後の排尿障害、性機能障害を回避するために、自律神経温存手術が提唱されてきているが、いたずらに本術式を乱用することは、癌の根治性を損なうことになりかねない。つまり神経周囲侵襲をきたす直腸癌に自律神経温存手術を行うことは、癌の根治性を損なうことになる。そこで、神経周囲信州侵襲をきたす直腸癌の特徴を病理組織学的、分子生物学的に解明することにより、自律神経温存手術の適応や方法について検討し、新しい術式の確立を目指している。本研究では神経接着分子(NCAM)に着目し、臨床病理学的因子との関連性を検討し、以下の結果を得た。 NCAM陽性例は43例、15.5%の頻度であった。病理学的因子のなかでNCAMと統計学的に有意差が認められたのは神経周囲侵襲、静脈侵襲、リンパ管侵襲、肝転移、深達度、組織型、リンパ節転移、炎症細胞浸潤で、多変量解析の結果、神経周囲侵襲が最も関連性が深かった(偏相関係数=0.47005)。治癒切除例の再発や生存率は、Dukes B症例ではNCAMの陽性例、陰性例に有意な差は認められなかったが、Dukes C症例ではNCAM陽性例の局所再発率が高い傾向が認められ、また、陽性例の10年生存率は31.3%で陰性例(63.1%)に比べて有意に低かった。 以上のことより神経接着分子は予後因子として重要であるばかりでなく、神経周囲侵襲の腫瘍マーカーとなる可能性が示唆された。つまり、NCAMが陽性の場合には神経周囲侵襲をきたしやすい癌の特性が考えられるため、自律神経温存手術は適応がないと判断される。逆に、NCAMが陰性の場合には、神経周囲侵襲をきたすことは極めて希れであるため、自律神経温存手術が適応となるであろう。問題点としては、NCAMの陽性率がやや低率であったために、神経周囲侵襲をきたしやすい直腸癌をすべて網羅しているとは言えなかった。したがって、NCAM以外のマーカーを発見することが今後の研究課題であろう。
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Report
(1 results)
Research Products
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