Research Abstract |
1.研究目的 光学顕微鏡下に互いに逆回転する2枚の平行な円盤を設置し,赤血球の懸濁液を円盤間に挿入することで,任意のせん断速度を負荷しながら赤血球が変形・破壊してゆく過程を観察できる精密レオスコープを開発し,血球破壊の力学的条件とその機構を明らかにスルことを目的とする. 2.方法 (1)レオスコープの原理 円盤間の隙間の中央に存在する赤血球は,等角速度で互いに逆回転する平行な2枚の円盤に挟まれることによって,せん断を受けながら,顕微鏡の対物レンズに対して静止するため,その破壊の過程を観察できる. (2)方法 2枚のガラス製の円盤を,DCモーター・回転制御装置によって,所定の回転速度に制御した.赤血球を懸濁した液体を,この円盤間に挿入し,顕微鏡,CCDビデオカメラを用いて,撮影・記録した.全血を遠心分離し,沈殿した赤血球にPBS(phosphate buffer saline)を加え,さらに遠心分離し,比重法を利用して,赤血球の細胞年齢別分離を行い,20〜35%デキストラン水溶液,または0〜65%グリセリン水溶液中に懸濁させた.溶媒を変えることによって粘性係数etaを変化させ,せん断速度gamma一定のまま,せん断応力tauを変化させた.円盤間に赤血球懸濁液を挿入し,両凹円盤から回転楕円体形状に変形,破壊されるまでの様子を記録・解析した. 3.結果 せん断応力が6 Pa以下の領域においては,せん断応力の増加に伴って赤血球の変形が著しい進行することがわかった.また,せん断応力が6〜16 Paの領域における赤血球の変形の程度は,(1)密度の小さい赤血球では,密度の大きい赤血球よりも大きいこと,(2)赤血球周囲の流体の粘性係数やせん断速度には依存しないことがわかった。
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