Research Abstract |
1.研究方法 雑種成犬15頭を対象に,人工心肺下に右房切開を行い,beating下に先ずHis束周辺にヨード液を塗布し,His束の染色を行った。その結果,15頭中5例では比較的鮮明なHis束の染色が得られたが,8例では不鮮明なHis束の染色しか得られず,2例ではまったくHis束の染色はみられなかった。 2.His束の染色がみられた13頭を対象に,beating下にHis束の中心部の心内膜直下に4%buffered formalinの注入を完全房室ブロックが発生する迄行った。この結果,His束の染色が鮮明にみられた5例では0.5mlのformalinの注入により,完全房室ブロックの発生をみた。しかし,不鮮明なHis束の染色がみられた8例では完全房室ブロックの発生に,平均1.1mlのformalinの注入を要した。 3.組織学的検討 0.5mlのformalin注入例では,全例His束の断面組織は完全に変性しており,健常心筋へのformalinの影響はわずかであった。しかし,他の8例ではHis束の断面組織の完全な変性は4例にみられたのみで,周囲の健常組織へのformalinの影響も大であった。 以上から,chemical ablation法の成否には優れた特殊心筋線維の染色法の確立が急務であり,ヨード法のみではchemical ablation法の臨床応用には限界のあることが示された。そこで,今後はより信頼性のある特殊心筋線維の染色法を開発し,新しいchemical ablationの確立を目標としたい。
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