Research Abstract |
実験動物として体重200〜250gのルイスラットとハムスターを用いて計29組の異所性心移植を施行した。手術手技はOno-Lindsey法に基づき腹部異所性心移植を行い、臓器のViabilityは心拍動及び組織学的所見及び免疫組織化学染色(CD4,CD8,IgG,IgM,C3)、血中抗体価測定により評価した。移植術後、対照群、FK群、CYA群と3群を作成し、対照群では免疫抑制剤を無投与とし、FK群では1mg/Kg/日のFK506を筋注し、CYA群では10mg/Kg/日を筋注した。この3群間において異種移植心の生着期間を検討したところ、対象群では3.8±0.5日、FK群では17.8±0.6日、CYA群では6.9±0.7日の生着が得られた。移植後3日目に採取した異種移植心に免疫組織染色(CD4、CD8、IgG、IgM、C3)を行い、浸潤細胞及び補体の沈着について検討すると、対照群ではCD4、IgG、IgM、C3補体の沈着が著明であったのに対し、CYA群ではCD4陽性細胞の増加を示し、ハムスター抗体価の有意な上昇を認めた。FK群ではCD4,CD8陽性細胞数の減少とIgM、C3沈着の有意な現象を示し、液性免疫抗体価の減少を認めた。異種臓器において補助循環を行う為には、異種移植臓器に置換された状態において細胞性免疫、液性免疫について完全にまたはよりその状態に近い免疫抑制がなされなければならない。研究結果においてFK506は細胞性免疫であるT細胞の浸潤を抑制し、血中抗体価の上昇を抑制できた面からも液性免疫を抑制しており、その成果より、FK506の異種移植への免疫抑制剤としての有用性が示唆された。
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