Research Abstract |
麻酔および人工呼吸の左心拡張機能に及ぼす影響とそのメカニズムを明らかにするため,臨床研究および動物実験で全身麻酔下に間歇的陽圧呼吸(IPPV)を施行し,経食道心エコー図法・ドプラ法によって以下のような結果を得た。 臨床例では,人工呼吸を施行した全身麻酔症例を対象として経食道パリスドプラ法により左房への流入血流である肺動脈血流速波形,左室流入血流速波形の検討を行い,肺静脈血流速波形の特徴,肺静脈血流速波形と左室流入血流速波形との相互関係を明らかにした(International J Cardiac Imaging 1993)。そしてIPPVに終末呼気陽圧(PEEP)を加えた人口呼吸を行い,肺静脈血流速波形では心室収縮期波の最大流速が,左室流入血流速波形では拡張早期流入波の最大流速が有意に低下することを明らかにした。これは心室収縮期における左房の貯留血流量の減少,心房のリザーバ機能の低下を意味し,これにより左室の拡張早期の充満が減少し,心拍出量低下を招くメカニズムか生じると考えられた。左室流入動態は,拡張早期流入に対して心房収縮期流入が優位となり,左室拡張機能の指標は低下する結果となった。 動物実験では,雑種成犬を対象としPEEPを加えた人工呼吸を行い,超音波ドプラ法により左房,左室の流入動態,肺動脈カテーテルによる心機能の指標から検討を行った。左房,左室流入動態は臨床例と同様な結果を示し,左室拡張機能は障害された。また,新たに開発中の超音波ドプラ法による絶対血流速度測定装置は現在動物実験に入っている。
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