Research Abstract |
一過性虚血後の脳神経障害に対する軽度低体温の効果について,行動,記憶・学習機能および組織所見より評価を行い,以下の結果を得た. ラットをイソフルレン麻酔下に気管内挿管し,人工呼吸を行った.頭皮より挿入したサーモカプルを頭蓋骨膜上に留置し,頭蓋温測定用とした.その後ラットを対照群と低体温群の2群に分けた.対照群は頭蓋温を38℃に,低体温群は35℃に維持した.30分間定常状態経過後,トリメタファン静注と静脈カテーテルからの脱血で低血圧(35mmHg)を維持し,両側総頸動脈をクリップで10分間閉塞して,前脳虚血とした.クリップ開放後吸引した血液を輸血し,脳を再潅流した.ラットを麻酔から覚醒させ,虚血後の神経症状とオープンフィールドによる行動を適宜観察した.4週間〜5週間後,水迷路法で記憶・学習機能を評価した.5週間後に脳を潅流固定し,組織傷害を評価した.両群とも明らかな神経脱落症状は観察されなかったが,低体温群では,対照群にみられた自発運動量の亢進は認められず,記憶・学習機能は良好に保持されている傾向があった.大脳皮質・線状体・海馬の組織傷害は,低体温群で有意に軽度であった.行動,記憶・学習障害および組織傷害の間に有意な相関はみられなかった.以上より,一過性脳虚血後の行動,記憶・学習機能および組織所見から軽度低体温の脳保護作用が示唆された.
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