Research Abstract |
前立腺細胞の成長調節機構は明らかにされておらず、アンドロゲンさえも、in vitroでは上皮細胞の増殖に関し相反する結果が報告されている。上皮成分と間質成分が相互に刺激因子を放出する事、また、アンドロゲンは間質細胞に作用して上皮細胞成長刺激因子を分泌させる機構の存在が推定されている。今回の研究では、デヒドロテストステロン(DHT)および/もしくは、前立腺の上皮、間質の培養上清の増殖刺激作用の存在につき検討した。 成犬前立腺を細切し、圧迫して上皮成分を圧出した。残った組織片を0.0125%コラジェネース液でデイスパースし、得られた細胞を2回継代し、間質細胞成分とした。上皮細胞は抗サイトケラチン染色陽性である事を確認した。10%FCSPO RPMI1640培地で4日間培養した後、DHTもしくは他成分の培養上清で2日間刺激した。メタンノール固定、ギムゲ染色を行ない、コンピューター制御自動吸光度測定機(Monocellator,オリンパス社)にて染色密度を比較した。染色密度は、実測した細胞数と有意に相関した(P<0.05)。染色密度はコントロールメディウム(CM)により刺激した細胞を100%とし、その比で比較した。 間湿細胞の培養上清(SCCM)を30%、50%、100%と増加させてゆくと、上皮細胞の染色密度は、138±9.5%(P<0.01,VS CM,N=6)、127±9.5%(P<0.05,VS CM)、105±9.5%(NS、VS、CM、P<0.05 VS 30%)と増加した。DHT濃度を1nM、10nM、100nMと上げてゆくと、上皮細胞染色密度は、119±9.5%(P<0.01 VS CM N=6)、116±2.4%(P<0.01、VS CM)、110±2.4%(P<0.05 VS CM)と増加した。次に上皮細胞をfresh mediumとSCCMの1:1混合液で、かつ、DHTの添加の有無により刺激し、効果を比較した。DHT plus SCCM、またPHT plns(inMDHTで刺激された間質細胞の)SCCMでも、SCCMのみと同程度の刺激作用示すだけだった(142±9.5%(P<0.01、VS CM,N=3)、145±9.5%(P<0.01 VS CM)、149±9.5%(P<0.01 VS CM))。間質細胞の増殖は、DHTにも、上皮細胞の培養液にも刺激されなかった。 上皮細胞はDHT、また間質細胞の分泌物により直接増殖が刺激される事がわかった。間質細胞由来の上皮細胞刺激因子はDHT刺激で増加しなかった。この刺激因子の解明は、今後の課題である。
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