Research Abstract |
膀胱癌由来樹立細胞株(KU1およびKU7)を用いて以下の実験を行った。 1.KU1およびKU7を1×10^4cell/wellの濃度で96-well multiplateに播種し,各濃度のCDDP単独刺激を施行し,72時間培養後crystal violet(0.2%in2%ethanol)にて染色後,吸光度測定法にて抗腫瘍効果を測定し,non linear regression curve fittingにてIG_<50>を算出した。IG_<50>値はKU1:0.2g/ml,KU7:0.4mug/mlとKU7はKU1に比し高く,KU7のCDDPに対する感受性はKU1に比し有意に低いことが認められた。これは細胞内glutathione(GSII)濃度の差によって生じるものと考え,KU7のCDDPに対する低い感受性を克服する為に,GSII阻害剤(Buthionine sulphcoximine:BSOおよびDiethyl maleate:DEM)による前処置後,CDDPを作用させた。その結果,KU7のIC_<50>値は0.2mug/mlとCDDPの抗腫瘍効果を増強することが可能であった。2.KU7をglass bottom tissue culture dishで培養し,Dichlorofluorescin-diacetate(DCFII-DA)で前処置後CDDP単独およびGSII阻害剤併用にて刺激し,細胞内Dichlorofluorescein(DCF)の蛍光量を指標にAnchored cell analysis and sorting system(ACAS)にて細胞内活性酸素を経時的に測定した。その結果,CDDPによる細胞内活性酸素の産生誘導を認め(2.5時間で1.0muM;コントロールは0.1muM),GSH阻害剤を前処置することでCDDP単独投与より多くの活性酸素が産生されることが認められた(BSO併用:2.9muM,DEM併用:4.7muM)。以上より,膀胱癌に対するCDDPの抗腫瘍効果において,活性酸素の関与が示唆された。KU7に対し,GSH阻害剤を作用させることでCDDPの抗腫瘍効果を増強し得ることから,KU7細胞内のGSH濃度はGSH阻害剤にて低下しているものと考えられた。今後の課題としては,DTNBreductase法等を用いて様々な条件下における細胞内GSH濃度を測定することが必要であると考えられた。
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