Research Abstract |
精索静脈瘤(以下本症)は陰嚢部の精系静脈が鬱滞,怒張する病態であり,造精機能を障害し,また手術により精液所見が改善することが知られている。しかし本症患者精子機能はこれまで精子濃度,運動率により判定されてきた。本研究では本症手術前後の精子について精子自動分析装置による精子濃度,運動能,トリプテイン標本を用いた先体機能,頭部形態という様々な機能を比較した。50例の本症患者を対象とし,その精液検体を使用した。精子濃度および運動能(運動率,運動速度,運動直進性)は精液自動分析装置を用いて分析した。精子先体反応はトリプルステイン法により観察した。すなわちトリンパンブルー,ビスマルクブラン,ローズベンガルよりなる第1,2,3染色を施し,第1染色により生存、死滅精子の判定,第2,3染色により先体反応の有無を判定し,先体反応陽性率を求めた。精子頭部形態はWHOの基準に従って分類後,頭部正常形態率を算定した。以上の精子濃度,運動能,先体機能,頭部形態を本症術前,術後3ヶ月で比較した。精液自動分析装置を用いた精子濃度および運動能は、すべての項目が術後有意に改善した。先体反応陽性率は術前9.1%,術後16%と有意に上昇した。また頭部正常形態率は術前39%,術後56%と有意に増加し、変形頭部を有する精子の比率が減少した。50例個々の本症患者の手術効果判定を試みてみると、精子濃度は54%,運動率は52%の症例で改善が見られ,運動速度,運動直進性はともに60%の改善率が得られた。さらに先体反応陽性率は84%,頭部正常形態率は86%の症例で手術後上昇していた。以上より本症手術により精子濃度,運動能(尾部機能),先体反応(先体機能),頭部形態(頭部機能)という検討したすべての精子機能が改善したことが示された。また先体機能,頭部機能の改善率がより高率であったことは,精子機能にも改善度に差異があることが示唆された。
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