Research Abstract |
ヒト子宮エストロゲンレセプター(ER)が,DNA結合によりどのように協同的ステロイド結合に影響を及ぼすかを検討した。 1.DNA結合性ERの調整段階において,従来必要とされていたリガンドが存在しない状態でも,ERは尿素によりtransformされることが明らかになった。 2.DNA結合性ERの特異性を検討する目的でcompetitive binding assayを施行したところ,estrone・estriol・testosteroneなどに比べ,estradiol(E_2)・diethylstilbestrolとより特異的に結合することが明らかになった。 3.DNA結合が,ERのE_2結合にどのような影響を及ぼすかを検討するために,DNA結合前・結合中・溶出後のERに対してequilibrium binding assayを施行し,得られた結果をScatchard及びHillの方法で解析した。ER濃度1nM以上では,DNA結合前・結合中・溶出後のいずれの段階でも正の協同性(Hill係数1.3以上)を示し,高親和性の状態で安定していた。すなわち,このアロステリック効果はDNA結合により影響を受けず,また,反応時間・温度の変化、尿素・塩(KCL)・還元剤(dithiothreitol)の有無によっても影響を受けないことが判明した。しかし,DNAカラムより溶出後のkd値(4.3±1.98nM)はDNA結合前(kd=0.86±0.14nM)及び結合中(kd=1.20±0.31nM)に比較して,有意に高値(p<0.001)を示しており,溶出後のERのリガンドとの親和性は低下していた。このことより,single-stranded DNAアガロースカラムから溶出されたERには,receptor associated component(RAC)が解離するなど,何らかの高次構造変化が生じている可能性が示唆された。
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