Research Abstract |
視細胞で受容された視覚情報は網膜内で処理され視神経を通して脳に送られる。しかし、視神経には求心性の線維だけではなく遠心性の線維も含まれる。脊椎動物の中でも鳥類の脳から網膜への投射系(向網膜系)は顕著に発達している。遠心性線維の活動は視神経細胞(神経節細胞)の光応答を強めることがわかっている。本研究の目的はこのような遠心性の情報が網膜内のどのような神経回路を介して視神経細胞に影響するのかを明らかにすることであった。 本研究ではウズラの遠心性線維の起始核であるisthmo-optic nucleus(ION)にbiocytin等の神経トレーサーを限局して注入し、網膜内のIONに由来する遠心性線維及び終末(IO線維、IO終末)を選択的に標識した。光顕、電顕レベルで観察し、IO終末がその標的細胞(IO受容細胞)にとって唯一主要な終末であることを明らかにした(Neurosciece Letter 154,35-38,1993に発表).神経伝達物質等に対する一次抗体との反応を併せて行ない、IO受容細胞が興奮性アミノ酸(グルタメイト、アスパルテイト)の免疫陽性を示すことを明らかにした(Neuroscience Research,suppl.18,S179,1993,解剖学雑誌68、715、1993に発表).更にIO受容細胞に蛍光色素を細胞内注入し、その特異な形態を明らかにした(来る5月米国ARVO年次総会にて発表予定).またこれら形態学的研究に関連して、ION系の網膜の出力に対する影響の様式の電気生理学的研究をVision Research(印刷中,1994)に発表した。 このように本科学研究費補助金の助成により、所記の目的を上回る知見が得られたと考える。
|