Research Abstract |
生後24時間以内に発症する先天性横隔膜ヘルニア(Bochodalek孔ヘルニア)は,最近の小児外科学の進歩にも拘らず,依然その予後は不良である。この原因の一つに肺の低形成が挙げられているが,本研究の目的は,この肺低形成の動物モデルを作成し,肺低形成の程度を単に定量的だけでなく,サーファクタントの局在や,肺血管系の障害の程度など免疫組織化学的手法を用いながら究明しようとするものである。 ラット(Spraque-Dawley種)を計画的に交配させ,妊娠9日目に,横隔膜ヘルニアや肺低形,心奇形,腎奇形等の催奇形作用を有する除草剤の成分であるNitrofen(2,4-dichloro-4'nitrodiphenylether)250mg/kgをオリーブオイル3-5mlに溶解し母体の胃内に投与し,妊娠を継続させ,妊娠20日目に母ラットをsacrificeし,胎仔を回収した。また,同様にオリーブオイルのみの投与群をコントロールとしてその胎仔を回収した。回収した胎仔は,横隔膜ヘルニアの有無,患側を確認し,その肺を摘出固定した。この結果,Nitrofen投与群で横隔膜の欠損を認め,肝,胃,小腸などが胸腔内に嵌入し,コントロール群に比べその肺重量/体重比は小さく肺の低形成を認めた。この動物実験モデルで得られた肺のサーファクタント(肺表面活性物質)の局在を調べるべく,人サーファクタント抗体を入手し免疫組織学的に染色したが,交叉性は認められず染色されなかった。またテネーシンによる免疫組織学的染色に於いても、投与群とコントロール群の間に有為差は見られなかった。現在,ラットサーファクタント抗体(札幌医科大学秋野教授より供与)を用い,正常胎仔群及び新生児ラットで免疫組織学的染色を行なっているが,投与群との比較は例数が少なく,結論はでていない。
|