Research Abstract |
1。新しいタイプのTGF-beta結合蛋白質の構造解析 Transforming Growth Factor-beta(TGF-beta)は、細胞の増殖並びに分化に及ぼす強力かつユニークな作用から、近時特に注目されている増殖因子である。我々は、生体内におけるTGF-beta活性の制御機構を解明する目的で、TGF-betaの新規結合蛋白質の精製並びに構造決定を行った。ブタ子宮膜画分より、TGF-beta-affinity columnを用い、各々40kDa,80kDa,150kDaの異なる分子量をもつ蛋白質を精製した^<1)>。さらに40kDaの蛋白質を単離し、得られたアミノ酸配列を元に、ブタ子宮のcDNA libraryより目的の遺伝子をcloningした。得られた遺伝子には2種類あり、塩基配列より予想されるアミノ酸配列では、お互いに80%以上の相同性を示す分泌蛋白質で、構造上Fibrinogen並びにCollagenに類似の部位をもつことから、それぞれFicolin-alpha,Ficolin-betaと命名した。recombinant Ficolinの構造並びに抗体反応性から、精製された80kDa,150kDaの蛋白質は、それぞれdimer,trimerであると考えられた。Northern blottingでは、Ficolin-alpha,Ficolin-betaに特徴的な発現様式がみられた。TGF-betaへの結合性を含めたFicolinの機能解明が今後の研究課題である。 2。TGF-betaタイプII受容体の機能解析 Activin受容体の遺伝子構造を元に、新規受容体蛋白質群の構造決定を行った。Activin type II受容体並びにDaf-1のSerine/Threonine kinase(S/T kinase)領域において、両者によく保存されているサブドメインIIおよびVIIより、degenerate primerを設計した。HEL細胞のcDNA libraryよりPCRを行い、異なる塩基配列をもつ9種類のPCR産物が得られ、これらの内2種類については、それぞれ、Activin type II receptor,TGF-beta type II receptorであることが判明した。残り7種類のPCR産物をprobeとして、それぞれに対応するcDNAをcloningした結果、すべて膜貫通領域をもつ受容体型S/T kinaseであり、それぞれ特異的な組織発現パターンを示すことが明らかとなった。さらに、ひとつのclone(ALK-5)は、分子量53kdの糖蛋白質をコードし、TGF-betaに結合するTGF-betatypel receptorであることが判明した。現在、既知のTGF-beta superfamily ligandを用い、他のALKに対するligandを検索中である。
|