Research Abstract |
細菌が特殊な菌体蛋白質を発現しこれを介して増殖に必要な栄養因子を効率よく取り込む系は細菌の増殖にあるいはその病原性に関わる重要な因子として注目されている。歯周炎の病因菌として有力視されているActinobacillus actinomycetemcomitans(A.a)が口腔内で十分利用できうると考えられる食物中のデンプンから唾液のアミラーゼにより産生されるマルトースやマルトデキストリン(alpha-1,4'-グルコオリゴ糖)に着目して,A.a.がこれらを基質として増殖した際の菌体蛋白について検討した。 Y4株をはじめ供試したA.a.はグルコース,フルクトース,マンノース,キシロース,マンニトール,マルトース,マルトデキストリンを基質として利用し増殖した。マルトース,マルトデキストリンで増殖したA.a.菌体にのみ43kDaの外膜蛋白と40kDaのペリプラスム蛋白の発現の誘導が認められた。 マルトース,マルトデキストリンでA.a.に誘導された43kDAの外膜蛋白は大腸菌でこれらの基質の取り込みに関わることが知られているマルトース誘導性外膜蛋白LamBにまた49kDaのペリプラスム蛋白は架橋アミロースに吸着しマルトース,マルトデキストリンでのみ特異的に溶出され精製されることから,マルトース結合蛋白MalEに類似しているが推測された。 A.a.が口腔内で増殖に利用することができるマルトース,マルトデキストリンを基質として増殖する際には43kDaの外膜蛋白,40kDaのペリプラスム蛋白を発現していることが明かとなった。これらの糖類の菌体内への取り込みと利用にはペリプラスムの結合蛋白を介する輸送系(Osmotic-shock-sensitive transport system)がA.a.にも誘導されている可能性が示唆された。
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