Research Abstract |
糖尿病者の味覚障害の原因を探る目的で、STZ誘発糖尿病ラット3カ月群,6カ月群,12カ月群の味らいの病理組織学的検討を行った。 1.STZラットの味らい細胞は,胞体の膨化・腫大・空胞形成,さまざまなautophagic vacuoleの出現,ならびに味らい内線維の膨化などを特徴としていた。乳頭の萎縮性変化とは対照的に,全STZ群の味らい細胞は膨化・腫大化していた。 2.3カ月群,6カ月群においては,空胞形成および核濃縮をしめし,12カ月群においてはそれらの所見に変わり,類脂質の増加とコラーゲン線維の増加が認められた。 3.全ての時期に出現する大量のautophagic vacuoleは,形態学的にMCB(membranous cytoplasmic body),ならびにzebra bodyであった。 4.細胞内小器官の変化としては,ミトコンドリア,粗面小胞体,ならびにゴルジ装置の膨化が観察された。 味らい内神経線維には膨化が生じ,II型細胞におけるsubsurface cisternaeの槽内に特徴的な膜様構造物が観察された。また,III型細胞における求心性シナプス部位においては,神経形質膜の変性,崩壊が認められた。このような神経線維の変性所見はあるものの,12カ月群においても神経要素は存在していた。 6.早期(3カ月群)においては味孔内物質の減少が著しく,この時期における味孔内環境の変化が示唆された。また,経時的な乳頭の萎縮性変化に伴い,味孔部は狭窄化する傾向にあり,12カ月群においては閉塞した味孔も多く認められた。 7.味孔部より細菌感染を起こした味らいも認められ,糖尿病における易感染性が示された。 以上,味らい細胞の変化ならびに神経要素の変化より,糖尿病における味らい細胞の機能的低下が示唆された。
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