Research Abstract |
本研究は,既にラット耳下腺分泌顆粒で報告しているCa^<2+>非依存性ホスホリパーゼA_2(PLA_2)活性制御機構について,活性上昇効果を認めているATPの作用を中心に検討したものである(Biochim.Biophys.Acta投稿中)。ATPによる本酵素の活性上昇現象は,ATPをGTPに置き換えても観察されたが,その上昇率はATPに比較して低く,GTPgammaSでは殆ど認められなかった。この傾向はEDTAにより反応系中のMg^<2+>を取り除いた場合でも同様であった。これらの結果は,ATPの活性上昇作用が,近年いくつかのPLA_2で提唱されている“GTP結合タンバク質"を介入する機構によるものではないことを示している。ATPによる活性化は,反応系から分泌顆粒の可溶性画分を取り除くと著しく低下し,新たに可溶性画分を添加することにより,濃度依存的な活性化効果の回復が認められた。当初,心筋由来のCa^<2+>非依存性PLA_2における報告と類似したATP作用仲介因子の存在が,分泌顆粒可溶性画分中に予想されたが,熱処理した可溶性画分あるいはウシ血清アルブミンの添加によっても同様の回復が観察されたことから,むしろ,一定のタンパク質濃度を保つことが,ATP作用の安定化に寄与していると考えられた。一方,高濃度のCa^<2+>の存在下ではATPによる活性化現象は全く認められず,GTPgammaSで著しい活性抑制現象が観察された。以上の結果は,分泌顆粒由来PLA_2,およびその活性制御機構の特殊性を明確に指摘できるものであり,今後は,本酵素の精製を進め,酵素タンパク質本位とATPとの相互作用の解析により,分子レベルでの活性制御機構を明らかにすると共に,分泌刺激との関連性についても検討する予定である。
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