Research Abstract |
歯周疾患の感受性における遺伝的要因を追求するため,歯周疾患関連細菌に対する免疫応答性の遺伝的調節を検索した。まず,ヒト免疫応答性の遺伝的視標の一つであるHLAの血清学的タイピングを早期発症型歯周炎患者33名について行った。その結果,クラスI抗原HLA-A,B,C抗原のどれも対照群(一般日本人集団)にくらべ,出現頻度に統計学的有意差は認められなかった。クラスII抗原については,患者群のHLA-DQ1の出現頻度が有意に増加しており,DR2も増加する傾向があった。DR抗原についてはより詳細なDNAタイピングを行うための有効なプライマーを決定した。 次に歯周疾患関連細菌7菌種の全菌体に対する血清抗体価を測定し,HLAとの相関を検討した。その結果,どの細菌の抗体価も,特定のHLAとの相関は認められなかった。しかし,初診時にPorphyromonas gingivalisに対する血清中抗体価が上昇している患者が8名認められ,そのうち,7名がDR4とDQ1の両方のタイプを持っていた。さらに質的な免疫応答性をみるため,イムノブロック分析をおこなった。P.gingivalisをSDS-PAGEにより分子量により分画し,その分画された画分に対する血清抗体の反応性とHLAとの相関を検討した。その結果,44,57kDaのP.gingivalisの抗原と反応する抗体を持つ患者が多かったが,特定の画分に対する免疫応答性とHLAとの相関は認められなかった。 現在,DR抗原についてはDNAタイピングにより,より細かなタイピングが可能となっており,これまで,数名の患者のDNAタイピングが終了している。今後,DQ抗原のDNAタイピングについても行い,より詳細な分析を行なう予定である。
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