Research Abstract |
本研究は,顎運動時の咀嚼筋の総合的な筋活動様式を定量的に解明することを目的とした.臨床的に顎機能に異常の認められない健常被験者に対し,ディジタル方式顎運動測定器(MM-JI)により顎運動の立体的な運動測定を行い,同時に咬筋,側頭筋前部,後部,顎二腹筋前腹筋電図を表面電極により,外側翼突筋の筋電図は双極のファインワイヤー電極を刺入することにより導出した.データは生体アンプにて増幅し,RMS処理を行った後,A/D変換器にて量子化しミニコンピュータにオンラインで取り込み解析した.まず第1段階として下顎頭運動に注目し,下顎頭に直接付着する唯一の筋である外側翼突筋下頭筋活動の筋活動様式について調べた.同筋は,開口,前方,側方運動時,下顎頭移動量の等しい顎位では,下顎頭移動速度と有意の高い正の相関を示した.また,開口運動経路上の顎位においては,下顎頭移動量と外側翼突筋下頭筋活動量はy=0.75x-2.14(相関係数0.89)の非常に高い正の相関が認められた.以上のことから,外側翼突筋下頭筋活動量は,下顎頭移動量によって決定される基本的な活動量があり,これに下顎頭の前方移動速度によって決まる筋活動量が加算されたものであることが明らかとなり,過去には行われていない咀嚼筋筋電図の定量的解析の可能性が示された.現時点では他の咀嚼筋との同時測定も可能となっているが,筋活動様式の定量的解析までには至っておらず,今後,データ数を増やし診断に有用となるパラメータの設定が必要と思われる. 支給された補助金により,記録媒体としてMOディスク等,顎運動測定シ-ネの製作,装着時に必要な印象材,咬合紙等を購入した.資料収集のために旅費を消費した.また,研究の補助者に謝金を計上した.
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