Research Abstract |
レーザ溶接は熱影響部が狭いために,高精度な補綴物の作製を可能とする.しかし,溶接精度は溶込みに影響される.そこで,レーザ照射条件によって溶込み形状を変化させ,照射条件と溶接精度の関係を明らかにした. 試料金属は50×3mmで厚さが2.0および0.5mmの純チタン,また,13×8×0.76mmの金銀パラジウム合金とした.純チタン試料には計測点を刻入し,溶接前後の計測点の座標変化を測定して,溶接部の変形を求めた.金銀パラジウム合金試料は,2枚突き合わせて溶接後,2枚の試料の湾曲度を求めた.なお,溶接にはパルスYAGレーザ装置を用い,パルス幅を10ms,照射エネルギーを40J/Pとし,アルゴンガス雰囲気中で溶接した.溶込み形状はおもに焦点はずし距離によって変化させた.また,試料両端の固定の有無についての比較も行った. 厚さ2mmの純チタン試料は,レーザ照射した方向に湾曲した.焦点はずし距離が小さくなり,溶込み深さが大きくなると,湾曲度は大きくなり,試料を固定しない場合には最大23mrad湾曲した.さらに焦点はずし距離が小さくなり,溶込みが照射面の裏側に達すると,湾曲度は小さくなった.溶接部の収縮も,焦点はずし距離が小さくなると大きくなり,最大35mumとなった.固定の有無による差はあまりなかった.厚さ0.5mmの試料の湾曲は厚さ2mmの試料よりも大きく,固定しない場合には最大142mrad湾曲した.しかし,厚さ2mmの試料とは逆に焦点はずし距離が小さくなると湾曲度は小さくなった.また,固定した試料はほとんど湾曲しなかった.金銀パラジウム合金の試料は,焦点はずし距離が小さくなると,湾曲度も小さくなったが,溶込みが照射面の裏面に達すると照射した方向と反対側に湾曲した. 以上から,高精度の溶接には完全溶込みが重要なこと,薄い部分の接合には強い固定が有効なことが判明した.
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